シューティングマッチの魅力について考える

写真は、弱冠16歳であり、世界中を見ても若手ナンバーワンの実力を持つKincaid Ross。既に複数のスポンサーを持ち、昨年のUSPSAナショナルズでもトップ5に入り、将来の世界チャンピオンとなること間違いないでしょう。日本では、とても若い子にシューティングなんて言うスポーツを勧めることは出来ませんが、アメリカでは、しっかりと自分が出来ることを考えていけば、シューティングで食べていける可能性があるのです。

最初の記事に何を書こうかと思いましたが、今回はシューティングマッチの魅力が何なのかを他とは違う視線で考えてみました。

今、日本ではサバイバルゲームがブームで、シューティングに興味を持つ人も増えていると聞きます。

なぜサバイバルゲームの人口が増えたのでしょうか。サバイバルゲームは子供の頃に遊んだ雪合戦、ドッチボール等と同じような遊び、レクリエーションと同じ楽しさ、面白さがあるからだと思います。芸能人がサバイバルゲームを趣味にしていることをテレビで話題にしたことから、ネガティブで暗いイメージが薄くなってきたことも影響が大きいですね。

それに対して、シューティングマッチの魅力や面白さとは何なのでしょうか?

的に当てる快感何てよく言いますが、それはちょっと広い家でのプリンキング、サバイバルゲームのフィールドで空き缶を撃つのと同じであり、シューティングマッチそのものの魅力ではないと思います。

しかも、シューティングマッチは安全面を初めにルールは実銃の試合をベースにしています。その為に、多くの人がそのようなルールに違和感を感じたり、そこまで厳しくする必要があるの?と疑問を持ってしまい、参加まで至らないのです。

わざわざシューティングマッチに参加しないで、仲間内で空き缶撃ちをして遊ぶ方がよっぽど気軽で楽しく遊べると思います。

僕はそれでも日本にいる頃から真剣にシューティングに取り組んできました。そこまで真剣になれた理由(=競技者にとってのシューティングマッチの魅力)、それは、誰かに認めてもらえる舞台があることでした。サバイバルゲームにおいて、1ゲームで何人をヒットしようが、そんなレコードは世間一般に価値はゼロです。それは、単にレクリエーションであり、遊びであるからです。

対して、シューティングマッチは競技であり、大きな試合での結果は記録になります。試合でもライバルとの勝負があります。結局は、勝敗を決めることであったり、順位がついて各種記録が他のスポーツと同じように後世に残ることが魅力なのです。それに加えて、豪華な賞金、賞品はその魅力をより充実させてくれます。

自分と同じレベルのライバルに勝った時の嬉しさ、負けた時の悔しさ、あるいは、自分が求める最高のパフォーマンスを人が見ているプレッシャーの掛かる状況で出すこと(=自己実現)を達成した時の感動、そう言ったのが競技としての魅力です。

今後もサバイバルゲームの余波で、関東を中心に一時的に興味を持った人がシューティングマッチへ参加し、人数はまだ増えるかもしれません。

しかし、ビジネスと成立するかも?と誰かを思わせるほどに、人口が増えることはないでしょう。なぜなら、今のシューティングマッチの多くが敷居を下げて初心者を受け入れ、参加人数を集める為にスポーツ/競技としての魅力ではなく、レクリエーションとしての魅力を謳ったものだからです。ある程度、増えたところで人は飽きてマッチへ参加しなくなると思います。この30年そうだったわけですから。

なので、日本でスポーツ、競技/コンペティションとしての魅力を前面に打ち出し試合が1つくらい出来て欲しいと思うのです。他のスポーツと同じように、自己実現であったり勝敗が付くことに魅力を感じてスポーツや競技を始めた人は長くその競技を続けています。

現在の日本でのシューティングマッチは、真のスポーツの魅力を伝えるものではなく、ただ単に「的撃ち」+海外のシューティングマッチの雰囲気ゴッコに過ぎません。

アメリカの本場のシューティングマッチの世界を見てきてここ数年で感じてきたのは、日本でもスポーツとしての人口を増やすのであれば、時間、お金を掛けて練習するだけの価値のある舞台(試合)が必要になるのでは?と言うことです。

現状を見ると、関東エリアでは、マック堺氏の動画やベテランシューターの皆さんの活動の影響で、レクリエーションとしてシューティングを楽しもうとする人たちは増えているようです。アンリミテッド、JSC等のエントリー枠がすぐに埋まるのが裏付けていますね。

レクリエーションとして楽しむことが目的の人たちは、成績はあまり意識しないと思います。エントリー費は安い方が良く、ルールも厳しすぎない方がイイと言う考えはそのような人たちを増やすことを意識したもので、とてもイイことだと思います。日米関係なく、レクリエーションとして参加する人たちが大半ですから、そう言った人たちを増やすことは非常に重要です。

ただ、スポーツ/競技としての人口を増やすと言うのであれば、間違いなく、真の日本一を決める、そしてその先の世界一(現状では世界一を決める試合はどの競技でも実銃ですが‥)に繋がるような試合が必要だと思います。勝つ為に時間とお金をかける価値がある試合、それはルールやROなどの運営がしっかりとされた周りに認めてもらえる為の舞台(試合)であり、賞金が出る試合などです。

今は、多くの試合が参加人数を増やしたいが為にルールを初心者向けに緩くする、賞品が出る試合でそれを全てくじ引きにしてしまう、実銃という世界に認められた舞台にはないオリジナルのエアガンでの競技を増やそうとする等の方向へ向かってしまい、真剣にアスリートとして頑張っている人たちがモチベーションを保つことが難しい環境が広がっているように感じます。

いつの日か、優勝者に数十万円の賞金が出るような立派な試合が出来て欲しい。

時間、お金そして何より人よりも何十倍も大きな情熱をこの競技に掛けている人たちが日本にも僅かながら存在します。

他のマイナースポーツ以上にマイナーなスポーツであるシューティングに時間とお金、情熱を捧げた名も無きアスリートたちが報われる為には、せめて同じ世界の人間に認めて貰える試合が今後の日本のシューティング界には必要です。

日本の試合で優勝して、その賞金を使ってアメリカを始めとした海外のシューティングマッチで世界に挑戦したいと願うアスリートシューターたちが出てくる。そんな規模の試合って日本で出来ないかなぁと淡い想いを持ってしまうのでした。